2014年02月24日

二つの国を受け継ぐ子どもたちへ。

今月上旬。

ブラジル繋がりの友人N子さんからの電話。

名桜大学で行われる、ポルトガル語の暗唱・弁論大会に参加しませんか、と。

聞けば毎年行われているらしく(今年で20回目)、N子さんもかつて参加したとのこと。

今年はエントリーする人が少なく、誰かいないかな~と担当の先生から話があり、

私に声をかけてくれたのだった。

ポル語の弁論、というだけで、私には縁のないカテゴリーに思えた。

その反面、もし参加するならば、嫌でもポル語の練習するようになるはず、との思いも。

詳細を確認し、A4・2枚の原稿で、題は自由、時間制限もなし、ということで

なんとかなるかな~ととりあえず参加する意思表明。

それが本番当日の約2週間前。

引き受けたからには、頑張らねば。

まずすぐに日本語での原稿作り。

これは二日くらいで完成。

それをポル語に訳す作業。

これが大変。

語彙力も文法力もない私は、一文訳すのに半日かかる。

ということで、頼りになるご主人様に全面的に協力依頼。

夜勤続きできつそうだったが、協力してもらわないわけにはいかない。

数日かけて、推敲を重ねる。

当初訳すと長すぎる原稿になったため、私の覚えられそうな限界の長さにまで圧縮。

やっと納得の内容に仕上がり、主人のお手本スピーチを携帯に録画。

それが完成したのが、本番4日前。

あとはとにかく覚えるのみ。

家事をしている間も、車での移動中も。

子どもらのおしゃべりや泣き声が混じるパパのお手本スピーチ動画とポル語原稿を肌身離さず持ち歩くこと3日間。

本番前日には、自分スピーチする姿を録画し、出来上がりを確認。

というよりも、どれくらいできていないかを認識。

あまりの酷さに、いまさらながら引き受けてしまったことを後悔。

しかし本番二日前には、担当の先生に日本語とポル語の両原稿を送っており、

やっぱりできません、とも言えない。

焦りと緊張感から、胃が痛くなる。

集中したいが、ソチオリンピックも気になる。

真央ちゃんのショートの結果に落ち込み、不安が募る。

でも、オリンピック選手に比べたら、自分の弁論覚えるくらいなんてことない!

と、無理やり関連付けて、とにかく覚える。

フリーで真央ちゃんが完璧な演技をした、あの涙と笑顔をみて、

「そうだ。自分の今できる精一杯をやればいいんだ!」

と勇気をもらい、一気に記憶力スイッチが入る。

もうひと踏ん張り頑張れば、そこそこ形になりそうだと希望の光が見えた前日、

想定外の試練が待ち受けていた。

それは本番前日の朝、三女が喘息の発作。

かかりつけの病院に行き、お薬をもらって帰宅。

ここ数回の発症では、これで治まるはずだった。

が、夕方になっても呼吸が荒く、苦しそう。

これは救急病院行きだと判断し、三女を連れて某大病院に向かう。

まず2回吸入して様子見るも、改善せず。

深夜12時をまわる頃、結局入院を勧められてしまう。

私自身今の三女と同じ4歳から喘息発作で苦しい思いをしてきたので、わかる。

当然三女が元気になるために手を尽くすのが優先。

とにかく早く治ってくれるよう願いながら、頭の中で

「明日のスピーチは無理だな」

とささやく声。

その声に、断る口実ができてホッとする自分と、

せっかくあと一歩のところまで頑張って覚えたのに残念、と思う二人の自分。

そして、今回声をかけてくれた友人の思いと、参加することを喜んでくださった担当の先生をがっかりさせてしまうこと考えると、

私の心は揺れに揺れるのであった。

点滴を受ける三女に添い寝しながら、まだ原稿に目を向ける自分。

やるかやめるか、決断は朝にしよう。

そう言い聞かせて、救急外来で三女と2人眠れぬ夜を過ごしたのであった。

本番当日の朝、入院は決まっていたが救急で駆け込んだ病院が満床とのことで、

別の病院に転院することになった。

弁論大会のスタートは午後2時。

会場は名護市。

移動だけでも片道1時間半はかかる。

逆算すると、出発は昼12時半をこえると間に合わない。

朝9時ごろ、やっと転院手続きの見通しが立ち、移動。

三女以外の子どもたちは、主人とおばあちゃんとで手分けして面倒をみてもらっていたが、

とりあえず転院先の病院に全員集合してもらう。

そこで私は皆に頭を下げた。

「弁論大会に、行かせてください」と。

私の性格を良く知っている主人も母も、何も言わず協力してくれた。

三女の付き添いはパパに。

ゼイゼイは少しあるものの、割りと元気な様子。

なによりも昨晩「パパ~パパ~~」と、

私を差し置いて泣いていたパパっ子三女なので、大丈夫。

残り三名は、私の家でおばあちゃんに見てもらう。

一番心配なのは、6ヶ月の長男。

ミルクは良く飲むので、とにかくお腹が空かないようにしていれば

数時間は大丈夫。

問題は私のほう。まだおっぱいが出るので、しばらく飲まないと

恐ろしくおっぱいがはれて石のようになるのだ。

出発前に、寝ていた長男を半ば無理やり起こしておっぱいを飲んでもらう。

出発予定時刻12時半を過ぎて、あわてて準備。

前日は病院泊まりだったので、シャワーを浴び、着替えて、化粧。

最近あまり着る機会のないワンピースとヒールを履いて、いざ出発。

制限速度ぎりぎりに高速の追い越し車線をひたすら走り、

安全運転を心がけながらも、覚えたスピーチを口ずさみ続ける。

つっかかると不安になるが、もう突き進むしかない。

上手になんて当然できないが、下手でもとにかく最後まで諦めないこと。

そんなことを考えながら、開始5分前に名桜大学に到着。

会場に着いて初めて、弁論部門は私ともう一人であることを知る。

前日に先生がメールで教えてくれていたのだが、メールチェックする余裕すらなかった。

暗唱部門には、名桜大の学生が4名。

そして弁論部門にアルゼンチンからの県費留学生が登場し、私は最後。

恥をかくのには慣れているが、それでもできる限り今できる最高のパフォーマンスを心がけた。

が、やっぱり練習不足。

何度もつっかかり、記憶が飛び、緊張で体が固まる。

それでも搾り出すように、最後の最後まで諦めずにスピーチした。

そして結果。

なんと、優勝(といっても、確率2分の1・・・)。

審査基準が、発音よりも内容重視だったのが私にとっては幸い。

タイトルは「二つの国を受け継ぐ子どもたちへ」とした。

初々しい大学生にまじって、オバサンの強みは人生経験。

ブラジルでの経験のこと、結婚、そして子どもたちのこと。

子どもたちが日本とブラジルの二つのすばらしい国の文化に触れて

幸せな人生を歩んでほしい。

そんな内容でのスピーチだった。

人生初の、優勝カップなるものを手にし、恐縮。
二つの国を受け継ぐ子どもたちへ。
20年の歴史のあるカップで、重みもひとしお。
二つの国を受け継ぐ子どもたちへ。

余韻もそこそこに、また高速に乗って一直線。

まず自宅に戻り、長男におっぱいをあげ、入院中に必要なこまごまとしたものをカバンに詰め込み、病院へ。

すでに時間は夜7時前。

三女は思ったよりも元気になって、プレイルームでおままごと中。

主人に結果を報告し、お礼を言う。

本当は家族みんなでドライブもかねて、名護に行く予定だったのだ。

私が発表している姿も、できれば主人や子どもらに見て欲しかった。

三女の入院によって、いろんな予定が狂ってしまい、一人で行くことになってしまったが。

主人の大いなる協力と理解があってこその、今回の成果。

本当に心から感謝。

終わってみて、正直下手くそすぎて恥ずかしさもあるが、

それよりも、この短期間で、家事&子育てしながらやり遂げた、

という面については、よく頑張ったよと、自分自身に言ってあげたい。

本当に、集中する時間がとれないのだ。

すらすら読めば5分くらいで終わるスピーチだが、

一生懸命覚えようと頭に叩き込んでいるときに、

「ママ~お腹すいた~」「ママ~見て~」「おしっこした~」「&x●5‘:)’4▼2%&’)△!!!!!」

ものの3分と静かになったためしがない。

そんな過酷な環境だからこそ、逆に集中力を保つ修行になったのかも。

さて三女はというと、幸いにも回復が早く

翌日には退院することができた。

一週間前に行われた、生活発表会では元気に舞台に上がっていたが、

実は彼女、家族がインフルエンザにかかっている間の約2週間

ずっと保育園を休まねばならず、発表会直前3日間しか練習に参加できてなかった。

それでも当日は実に堂々と舞台で歌や踊りを披露。
二つの国を受け継ぐ子どもたちへ。
なんだ、私も三女も似たような状況だったんじゃん。

今、気づいた。やっぱり親子だ。

弁論大会まで、いろんな思いをしたけれど。

挑戦してよかった。

そして、協力してくれた家族に、感謝。
二つの国を受け継ぐ子どもたちへ。
Muito muito obrigada! Amo todos muito!!


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Posted by ぶるーな at 12:11│Comments(4)Noticias do Cotidiano.
この記事へのコメント
感動した&泣けました(T ^ T)
なんだろう、適切な言葉が出てこないんだけど、一生懸命活きてる!(生きてるじゃなく)
人間と家族のパワーと愛を感じました
ありがとう*\(^o^)/*
Posted by 真実嬢 at 2014年02月28日 13:53
ありがとう~。
真実嬢の涙腺がゆるんでいることが、感動~(笑)!
しばらくはこんなに頑張れないかもしれないけど、また仕事が始まったら毎日集中力発揮しなきゃね。育休中だからできたよ~。
Posted by ぶるーなぶるーな at 2014年03月01日 17:22
 みなみちゃん、大変でしたね。

 四人の子供たちを育てながら、仕事や、日々の生活にも全力投球。
本当に素晴らしいことです。
ぶるーなさんのブログを読むと、「私も頑張ろう」という気持ちになります。

 弁論大会の写真に写っている後列、右端の方はS教授でしょうか?
名桜大学、懐かしいです。
Posted by sookiesookie at 2014年03月03日 05:31
ありがとうございます。
「やりたいことをやる」というわがままに、家族がいつも協力してくれているので、本当にみんなのおかげです。。
 S教授に今回大変お世話になりました。私自身はあまりご縁のなかった名桜大ですが、すばらしい学長先生をはじめ、S教授、学生さんに出会えてとても刺激を受けました♪
Posted by ぶるーなぶるーな at 2014年03月03日 15:53
 
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