サンパウロの街で、買い物やらを済ませたその夜。
明日の朝、リオデジャネイロに向かう早朝のバスに乗るため、早めに就寝。
といっても、時差ボケ真っ最中の三人。
寝たり起きたり、とにかく体を横にして、夜の暗い時間は眠る努力をする。
朝、ちょっと気分が悪そうだった長女は、初日から大好きなお洋服を買ったりして、
すっかり元気。
ほっとしたのもつかの間、添い寝している2歳の長男の体が、熱い。
全身が、湯たんぽ状態。
これはまずい。
何といっても、明日の朝は早起きして、6時出発のバスに乗らなければいけない。
3人のうち、誰かが体調不良だと、日程が狂ってしまう。
何としても、この長男の熱を下げなければならない。
私がこれまで体得した育児の知識と知恵を集結し、
まずは、この熱が何なのかを診断。
咳、鼻水を伴っていないことから、風邪ではない。
環境の急激な変化によって引き起こされた、一時的な発熱であろう。
ということは、汗をかけば、さっと熱は引いていくはず。
熱を測りたい気持ちはあったが、
ここで義母や義姉に「体温計貸して」と言い、
実際に2歳の長男に38度もの熱があると知られた時にゃ、
絶対に「ポスチンニョに行かなきゃ!」
「明日リオは行かないほうがいい」
と、言われかねない。
はい。
わかります。
病気の子どもを連れて、長旅などできませぬ。
が、しかし。
今回のブラジル3人旅の目玉は、リオ観光なのだ。
予算がないにもかかわらず、ブラジル人の主人でさえも行ったことのないリオに、
どうしてもいかなければならない理由が、私なりにあるのである。
それは、長女に「リオ」を見せたかったこと。
ブラジルを、もっと身近に感じてもらいたかったこと。
きっと来年(もう今年)のリオオリンピックで、
ブラジルは注目される。
テレビにもよく映るであろう。
その時に、
ブラジル国籍も持ち、ブラジルの名前もついている彼女が、
ブラジルに興味を示さなかったら、私はさびしい。
これまでのブラジル生活や旅行の経験はあるが、
幼すぎた彼女の記憶に残っているブラジルは、少ない。
でも今回、彼女は10歳。
しっかり、体験を記憶に残せる歳になったのだ。
2歳の長男の面倒もある程度任せられる、頼れるお姉ちゃん。
彼女に、オリンピックの開催地リオデジャネイロを、知ってほしい。
きっとそれが、彼女のアイデンティティの構築にも欠かせないはず。
リオオリンピックが始まるその前に。
とにかく、リオにいかねばならないのだ。
3人のうち、一人でも体調不良だと、日程が狂う。
リオ滞在予定は一泊のみ。
明日の朝までに、なんとしても、長男の熱を下げなければ。
私のこれまでの育児経験の知識と知恵を集結し、
長男の熱の原因を診断。
咳や鼻水の風邪症状は見られない。
きっと環境の急激な変化に伴う、一時的な発熱であろう。
決して、重篤な病の兆候ではない、、はず。
ということで。
添い寝している長男を抱きながら、
私の祈祷が始まる。
「大丈夫大丈夫。下がる下がる。熱は下がる。」
「汗かけ汗かけ。」
数時間後、思った通り、額や背中にじんわり汗が。
よしよし、この調子。
汗をタオルでふき取りながら、だんだん熱が引いていくのを感じ取る。
今37度台。
体温計などなくとも、母にはわかるのだ。
そして、すっかり汗をかき切った長男。
何事もなかったかのように、お目覚め。
よし。平熱。
ミッション、クリア。
私も、何事もなかったかのごとく、リオへの旅支度。
誰にも悟られることなく、
この一晩の闘いを征した、なんとも言えない達成感。
きっと、ひどい母親と思われるかもしれない。
しかし、これくらいでオドオドするなら、
誰が母一人で、ブラジルまでこんなおチビを連れてくるものですか。
大丈夫。
この、自分でもあきれるほどの、根拠のない自信。
それが私を動かしてしまうのである。
朝5時前に義母宅を出て、地下鉄に乗る。
ブラジルらしくない、綺麗すぎる地下鉄。
ほら、子どもら元気♪
サンパウロから長距離バスで、約6時間でリオに行ける。
ブラジルの感覚では、6時間のバス移動は短いほう。
途中一回、休憩。
車窓から見るリオは、工事中のところが多い。
オリンピックに向けて、いろいろ整備中のようだ。
頑張れ~。働け~。
ほらほら、リオだよー、と声かけするも、時差ボケ中の子どもらは爆睡。
狭い車内で、よく眠るわ。
心配していたお天気も、悪くない。
リオに着いた瞬間の、むわっとした空気。
これぞ、ブラジルの夏。リオの夏。
私にとっては三度目のリオ。
治安の心配はあるけれど、何といっても主人の長女Kちゃんが一緒だから心強い。
Kちゃん、よろしく~。
さー、楽しむぞ~。
・・・続く・・・